Search

山上容疑者のツイッター投稿、にじむ社会への不満や孤立…心の内を識者が分析 - 読売新聞オンライン

 安倍晋三・元首相(67)が銃撃されて死亡した事件は8日、発生から1か月を迎えた。山上徹也容疑者(41)は事件前にツイッターで、母親が入信した宗教団体への恨みや生い立ちへの嘆きのほか、政治問題に関する私見や社会への不満など多岐にわたる内容を投稿していた。現在、精神鑑定を受けている山上容疑者。つぶやきから見える心の内を識者が分析した。

 山上容疑者が「silent hill 333」のアカウント名で投稿を始めたのは2019年10月13日。以前に別のアカウントでも投稿していたが、利用ルールに違反し、ツイッター社に凍結されたため、新たに開設したとみられる。

 以前のアカウントの内容は確認できないが、「silent hill 333」の投稿1364件は7月19日に凍結されるまで閲覧できた。目を引くのが「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)への恨みと、生い立ちに関する内容だ。

 <オレが14歳の時、家族は破綻を迎えた><オレは作り物だった。父に愛されるため、母に愛されるため、祖父に愛されるため>

 国際医療福祉大の橋本和明教授(犯罪心理学)は、山上容疑者が家庭で「逆境」を感じていたと分析する。

 「家族に気に入られる偽りの自分を演じざるを得ない状況に苦しみ、助けを求めていた」と推察。しかし、母親は同連合の活動にのめり込み、自身に関心を持ってくれなかった。「母親を恨むとともに、愛着も捨てられず、成長するにつれ、苦しむ原因を旧統一教会に見いだし、恨みの対象としていったのだろう」とする。

 筑波大の土井隆義教授(社会学)は、家族を除く「他者」との関わりがほとんどないことに着目した。

 特に印象に残ったのが、<何故かこの社会は最も愛される必要のある脱落者は最も愛されないようにできている>との投稿だ。不遇な人生や社会の格差に対する不満、そして深い諦観が示されているという。

 土井教授は「他者と関わりがあれば、考えを修正したり客観視したりする機会がある。しかし、社会から孤立する中、旧統一教会への恨みという負の感情にブレーキが掛からなかったのだろう」と推測する。

 では、なぜ恨みの矛先が安倍氏に向かったのか。山上容疑者は「(同連合と)安倍氏はつながりがあると思った」と説明しているが、動機としては、論理に飛躍があるとの見方が強い。

 関係者によると、以前のアカウントでは安倍氏の殺害を示唆する内容の投稿があった。しかし、19年10月以降は安倍氏に関して頻繁に投稿していたものの、敵意を示す記述はない。

 東洋大の桐生正幸教授(犯罪心理学)は「ツイッターからは政治や社会問題への一貫した考えを持っていることがうかがわれ、知的レベルは高い。事件も彼なりの合理的な考えに基づいている」との見方を示す。

 その上で、安倍氏に強い関心を持ち、その影響力を十分に理解していたとして、「旧統一教会に打撃を与えるという目的のために何が最適か冷静に考え、手段として安倍氏を標的にしたのだろう」と指摘する。

 直木賞作家の黒川博行さんは「文章のプロ」としての立場から分析した。

 山上容疑者は事件直前、松江市のルポライターに手紙を送っていた。黒川さんは「手紙は文章が練り上げられ、プロに近いセンスを感じるが、ツイッターは稚拙だ」と評する。「頭の中で考えたことが、そのまま言葉として出ている。それだけに偽りのない彼の本音なのだろう」と語った。

 AIシステムの研究開発を手がける「ユーザーローカル」(東京)のソフト「テキストマイニング」を使い、2019年10月以降の8万文字以上の投稿を分析した。

 他人の投稿のリツイート(転載)を除くと、30回以上出てくる言葉は20件。事件と関連する「統一教会」や「安倍」が含まれる。保守的な考えを持っていたことがうかがわれ、「日本」や「中国」などのほか、安倍政権の憲法解釈について論評していた「集団的自衛権」も30回を超えていた。

 投稿頻度は時期によって隔たりがあり、月100件を超えたのは20年6月と8月の2回。8月は安倍氏が首相辞任を表明した時期だ。山上容疑者が銃に使う火薬の製造を始めたとされる昨春以降は目に見えて減り、1桁になる月も増えた。事件の準備に集中し、投稿を控えていた可能性がある。

Adblock test (Why?)


からの記事と詳細
https://ift.tt/Y28OZIP
日本

Bagikan Berita Ini

0 Response to "山上容疑者のツイッター投稿、にじむ社会への不満や孤立…心の内を識者が分析 - 読売新聞オンライン"

コメントを投稿

Powered by Blogger.