★岸田首相は10日に発足した第2次内閣で、外相に側近の林芳正を起用した。5日には元首相・安倍晋三や党副総裁・麻生太郎に根回しの電話をして理解を求めたが2人の理屈は「対中関係で国際社会に間違ったメッセージを与えかねない」というもの。17年から日中友好議員連盟の会長を務めていることに難癖をつけた。林は11日に同連盟会長を辞任した。だが実際は防衛相・岸信夫を外相にしたい安倍や自らも外相経験がある麻生から政治的思惑で難色を示されたのだろう。

★だが首相は「気心の知れた頼れる人に閣内にいてほしい」と押し切ったようだ。林がポスト岸田であると認めたということだろう。しかし派内はそう簡単ではない。確かに岸田周辺には気心の知れた人物がいない。官邸には宏池会で側近の官房副長官・木原誠二だけ。他派閥からは宏池会にはベテランの元厚労相・根本匠や元防衛相・小野寺五典が脇を固めているではないかと思うだろうが、2人は総裁選挙でも福島県と宮城県を岸田でまとめられなかった。同派中堅議員は言う。「派内では根本や小野寺の求心力は急激に低下している。では林に派閥全体がスライドしていくかというとそうではない」。

★林を見ていれば農水、文科、防衛の各大臣をそつなくこなし、外相起用で自他ともに認めるポスト岸田ではないのか。別の宏池会議員が言う。「キャリアだけ見れば立派なものだが、これでは派閥の大先輩、元首相・宮沢喜一と同じ器用なだけになってしまう。参院から衆院に来たばかりで同じ派閥といっても衆院議員との濃密な付き合いの少ない林がまた閣僚になれば、面倒見の悪いエリートになってしまう。ここはほかに譲って閥務で汗を流せば衆院宏池会にも受け入れられるのではないか」。岸田期待の星も派内で人気が出てこそという意味では2Aの指摘もあながち間違いではない。(K)※敬称略