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海中に沈むのは駅のホームか・・・地震後に起きた地滑りの痕跡 100年前、列車もろとも131人犠牲に:東京新聞 TOKYO Web - 東京新聞

<関東大震災100年>

 関東大震災では、東京の下町を中心とした火災で多くの死者が出たため、「東京の地震」と考えられがちだ。だが、震源域の神奈川県では強い揺れによる土砂災害で多くの人が亡くなった。特に、相模湾に面した小田原市根府川地区は被害が大きかった。その地滑りの痕跡は今も海中に眠っている。(永井理)

◆相模湾に面する小田原市根府川地区

関東大震災の地滑りで海中に沈んだ根府川駅のホームとみられる残骸。四角い石積みが並んでいる=根府川ダイビングサービス提供

関東大震災の地滑りで海中に沈んだ根府川駅のホームとみられる残骸。四角い石積みが並んでいる=根府川ダイビングサービス提供


海と山に挟まれているJR根府川駅周辺

海と山に挟まれているJR根府川駅周辺

 根府川地区は、箱根山の麓がそのまま相模湾に没する急斜面にある。JR東海道線の根府川駅から長い急坂を下ると海岸に出た。標高差は約45メートルだ。

 「あの先にプラットホームが沈んでいます」。根府川ダイビングサービスのインストラクター高橋監二さん(48)が、数十メートル沖で波に洗われる消波ブロックを指さして教えてくれた。

 100年前、根府川駅は今とほぼ同じ場所にあった。激しい揺れで背後の斜面で地すべりが起き、駅舎とホーム、駅についた下り列車が海中に押し流され131人が亡くなった。箱根火山の溶岩の上に堆積した地層が滑り落ちたとみられる。

 列車は11年後に引き揚げられたが、ホームはそのまま。海岸から数十メートルの沖合にはホームと思われるコンクリートの構造物が、数カ所に分かれて沈んでいる。高橋さんは主なものを1番ホーム、2番ホームなどと名付けてダイビング客を案内している。「線路と思われる部分もある」

 震災遺構が眠る海として、ダイバーの間で知られている。7月だけで50人ほどを案内した。駅周辺にある数カ所の震災慰霊碑や釈迦しゃか堂などを巡ってから潜ることも始めた。

 関東大震災の土砂災害 関東大震災を引き起こした大正関東地震は1923年9月1日午前11時58分に発生した。震源は神奈川県西部で、地震の規模はマグニチュード(M)7.9。東京や神奈川、千葉などで当時の震度階級で最大の震度6を観測。家屋の倒壊状況などから、相模湾沿岸地域や房総半島南端では現在の震度7相当の揺れだったと推定されている。揺れが強かった神奈川県内の土砂災害は103カ所に上り、死者・行方不明者は945人以上に及んだ。東京は6カ所14人で、大きな開きがある。特に神奈川県西部では犠牲者が650人以上と被害が大きい。中でも丹沢山地で多く起きた。

◆「当時の様子がこれほど保存されているのは貴重」

関東大震災の地滑りで海中に沈んだ根府川駅の一部とみられるコンクリート塊=根府川ダイビングサービス提供

関東大震災の地滑りで海中に沈んだ根府川駅の一部とみられるコンクリート塊=根府川ダイビングサービス提供

 「非常に生々しく残っている」と、海底を調べた東京海洋大非常勤講師の林原利明さん(62)=水中考古学。ホームは周囲を縁取る四角い石組みとともに、深さ十数メートルあまりの海底に横たわる。

 陸上の爪痕は多くが復興とともに消えた。「当時の様子がこれほど保存されているのは貴重。どこに何が沈んでいるかきちんと調べるべきだ」と訴える。

 林原さんらは「博物館やメモリアルパークのような場にできないか」と考えている。海に潜ってもらったり、ダイバーの持ったカメラでリアルタイムで見てもらったりして、震災の激しさを感じてもらう構想だ。「多くの人に見てもらえば保存にもつながる」

根府川駅に入ろうとした列車は駅もろとも土砂に押し流され海に沈んだ(1925年に神奈川県が発行した「大震災記念写真帖」より)

根府川駅に入ろうとした列車は駅もろとも土砂に押し流され海に沈んだ(1925年に神奈川県が発行した「大震災記念写真帖」より)

 5月から、潜水調査や鉄道の研究者と駅の設計図を探すなど資料を集めている。音波探査による正確な地図づくりが必要だが、自治体の遺跡調査ではなかなか費用が出ない。防災関連予算や民間の助成金の利用など可能性を探っている。

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