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医師の自己研鑽、経営側が利用すれば「やりがい搾取」に 識者が警告:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル

 病院の中には、医師の時間外労働を短く見せかけるため、実態は仕事をしていたのに「自己研鑽(けんさん)」として扱おうとする動きがあります。来年4月から「医師の働き方改革」が始まり、時間外労働が罰則付きで制限されることに対応するためです。

 医師の労働問題に詳しい荒木優子弁護士は、「最悪の場合は過労死につながる」と警告します。詳しく聞きました。

知識や経験が求められる医師

 ――一般の人も自分で勉強します。医師の自己研鑽は何が違いますか?

 医師は人命を扱う仕事です。例えば手術のための技術を身につけたり、新しい治療法や薬について勉強したりして、高度な知識や経験を積むことが制度上の責務として求められています。

 そして、それらの習得にはとても時間がかかります。

 ――医師の自己研鑽の時間は、労働時間なのでしょうか?

 一般的に労働時間とは、「使用者の指揮命令下に置かれている時間」を指します。国も、上司の指示によって業務をすれば労働だという考えを示しています。

 ただ少し前まで、医師の時間外の行為のどこまでが業務で、どこまでが自己研鑽かは、大きな問題になりませんでした。

 そもそも多くの病院が、医師は長時間労働をしている前提で、労働時間を正確に把握しようとしてこなかったからです。

 例えば朝まで宿直しても、定額の手当はもらえますが、時間の長さに応じた正当な対価はほとんど支払われてきませんでした。

タテ社会の病院に自由意思ある?

 ――そんな中、厚生労働省が2019年、業務と自己研鑽を線引きするための基準を通達しました。何のためでしょう?

 2024年4月から始まる医師の働き方改革によって、時間外労働には、原則年960時間(月80時間相当)の上限ができます。

 医師は病院に遅くまで残ることも多いですが、すべて時間外労働としてカウントすればすぐに上限を超えてしまいます。

 厚労省も病院も医師に上限を守らせたいので、基準を作ることによって、できるだけ時間外労働から自己研鑽の時間を除きたかったのでしょう。

 ――通達は「時間外に、本来業務と関係ないことを、上司の指示なく自由意思に基づきおこなえば研鑽」という内容です。運用上の問題はありますか?

 通達は抽象的な内容なので、病院経営者から都合よく解釈され、幅広い業務が自己研鑽として扱われてしまう可能性があります。

 特に大学病院では、医局の人事は教授が握っており、医局員たちは専門医資格や博士号をもらうためにも逆らえません。

 上下関係が強い世界で、本当に「自由意思」などあるのでしょうか。実際はやらざるを得ない状況なのに、自主的にやったことにされかねません。

 ――名古屋大学医学部付属病院は、時間外の教育・研究活動は原則として自己研鑽と扱っていることがわかりました。どこに問題がありますか?

 まず、大学病院において教育…

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