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スエズ運河庁、日本の船主に賠償請求の公算 海運業のリスク分散が裏目 - 産経ニュース

 29日、エジプトのスエズ運河で離礁したコンテナ船「エバーギブン」(ロイター=共同)
 29日、エジプトのスエズ運河で離礁したコンテナ船「エバーギブン」(ロイター=共同)

 エジプトのスエズ運河で座礁したコンテナ船「エバーギブン」は、世界の海上輸送物資の1割超が通過する大動脈を遮断した。運河を所有・管理するスエズ運河庁は、取り損ねた通航料に加え、運河修繕の費用について、同船を所有する今治造船のグループ企業の正栄汽船(愛媛県今治市)を相手取って賠償を求め、エジプトなど現地の裁判所に訴訟を起こす公算が大きい。

 海運関係者によると、スエズ運河の通航料は大型船であれば1回あたり約3000万円とも5000万円ともいわれ、通航船舶は一日当たり約50隻に上る。一日遮断すると15億円の損失が生じる計算だ。事故の影響で360隻以上が足止めされ、アフリカ大陸南端の喜望峰を経由する代替ルートに切り替える船舶も出始めていたという。

 コンテナ船が接触して岸の一部が崩落し、離礁作業の完了後も復旧作業が続く可能性が高く、賠償額は未知数だ。海運に詳しい保険業者は、スエズ運河庁が正栄汽船と同社が加入する保険会社に示談交渉を持ちかける可能性もあると指摘する。

 座礁した船は台湾の海運会社、エバーグリーン・マリンが運航。19世紀後半にドイツで創業した大手船舶管理会社、ベルンハルト・シュルテ・シップマネージメントがインド人乗組員25人などの手配を担っていた。海運会社は巨額投資が必要になる造船をせずに運航用船舶を調達し、船主は船舶管理を別会社に委託し海運会社からリース料を受け取る。世界の海運業界では一般的な「用船契約」と呼ばれ、日本では明治時代から採用されているリスク分散の仕組みだ。

 船主は船舶を貸し出した際にも船体の損傷や事故などに責任を持つ立場となるため保険に加入する。保険は船体にかけるものと、荷物や油の流出事故などに備える2種類。座礁したコンテナ船は船底が損傷した可能性があり、正栄汽船の担当者は、修理費用は「間違いなく保険適用になる」と話す。一方、ある関係者は、「運河に与えた損害補償は、正栄汽船が保険を使うなどして対応する可能性が高い」という。

 英海運専門紙ロイズ・リストは、運河が封鎖され多くの船が足止めされたことで、遅延などに伴う損害額は1日あたり96億ドル(約1兆500億円)と推計した。ただ、この損害に対する補償は、足止めされた船舶の所有者が加入している保険で対応するようだ。船舶が代替ルートを使う場合は追加費用が発生するが、過去に起きた同様の賠償金請求訴訟の例をみると請求が認められないことが多く、費用や時間などを考慮して提訴する会社は少ないとみられている。

 各国・地域にまたがる事業者がそれぞれの役割を担うリスク分散体制が取られる世界の海上輸送業界だが、損害が生じる事故が起きた場合には船主に負担が圧し掛かる構図が浮き彫りになった。

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